2006年7月19日
STRONG&COMPANY (FAR EAST) LTD. 御中

社団法人 日本建築家協会(JIA)
     関東甲信越支部 支部長 伊平則夫
同 保存問題委員会 委員長 川上恵一
同 神奈川地域会  代 表 室伏次郎

「横浜ストロングビル」の保存活用に関する要望書

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
貴社におかれましては、長年にわたり横浜都心部の経済振興、まちづくりに多大な貢献をされており、深く敬服するところであります。

 さて、貴社が現在再開発計画を進めておられます山下町204番地に現存する「横浜ストロングビル」は、ご高承のように、横浜ゆかりの建築家である矢部又吉の設計により、1937(昭和12)年に竣工した建築です。全体としては装飾の少ない、昭和初期のオフィスビルの典型的な特徴を有した堅実なデザインですが、中央の玄関ポーチに優雅な意匠を施すことにより、外国商社建築としての品位が見事に表出されており、銀行建築を多く手がけた矢部の手腕を示しております。また、大桟橋通りの景観に横浜関内の歴史の香りを添える佳品として、長年市民や港ヨコハマを訪れる観光客に親しまれ、横浜市の歴史的建造物のリストにも掲載されております。
 近年、関内地区において、戦前期のオフィスビルが徐々に失われており、大正期から昭和戦前期の、横浜の繁栄の舞台となった建築の存在が希薄化していることは、「港ヨコハマ」の都市景観の魅力にとって憂慮すべき状況であると思われます。都市の魅力は、多様な建造物がさまざまな形で歴史の語り部として継承されてこそ、都市の重層的な魅力、ひいては都市の経済的価値の向上に繋がるものと考えます。また、この横浜ストロングビルを取り壊すことなく保存しながら、その建築的・景観的魅力を活かした新しい建築を建て敷地の有効活用を図ることは、新たに設置される施設にとっても多様な価値を付与し、多大なメリットを与えるものと確信します。また、横浜市などの行政においても、さまざまな歴史的建造物の保存・活用の試みに対する支援制度を有しており、その適用事例は関内地区においても多く見ることができます。
 なにとぞ、関内地区の歴史的資産の一つである横浜ストロングビルを安易に取り壊すことなく、その価値を積極的に活かした新旧が共存する「港ヨコハマ」らしいビル計画を立案し、事業を進めて頂く事により、今まで同様に横浜のまちづくりに貢献いただきますよう、お願い申し上げます。

 なお、社団法人日本建築家協会関東甲信越支部、同 保存問題委員会、及び、同 神奈川地域会は、建築物の保存活用について、技術的なアドバイスが出来る体制をもっており、出来る限りの協力をさせて頂く所存である事を申し添えます。

敬  具